メールの開封率はどこまで信用できるか|Appleの「メールプライバシー保護」以後の見方

メルマガの開封率は、件名の良しあしや配信のタイミングを判断する、いちばん手軽な数字でした。ところが今は、開封率だけを見て判断すると読み違えることがあります。Appleの「メールプライバシー保護」を使っている人の受信箱では、メールを開いていなくても「開封」として数えられることがあるためです。この記事では、開封がどうやって数えられているのか、何が分からなくなったのか、そしてクリックやサイトへの再訪を使ってどう判断し直すかを、ネットショップのメルマガを例に紹介します。

更新

開封はどうやって数えているのか

メール配信ツールの多くは、メールの本文に目に見えないほど小さな画像を1枚入れて送ります。受信した人がメールを開くと、メールアプリがその画像を配信ツールのサーバーから読み込みます。この読み込みがあったことをもって「開封」と数えます。

つまり、ツールが本当に見ているのは「人がメールを読んだか」ではなく、「画像が読み込まれたか」です。人が開いたときだけ画像が読み込まれる環境なら、この2つはほぼ一致します。しかし、人が開かなくても画像が読み込まれたり、開いても画像が読み込まれなかったりすると、開封の数と実際に読んだ人の数がずれていきます。

これに対して、メール内のリンクのクリックは、リンクがいったん配信ツールのアドレスを通ってから本来のページへ移る仕組みで数えます。お客さまがリンクを押さない限り、ふつうは記録されません。この違いが、この記事の結論の土台になります。

Appleの「メールプライバシー保護」で何が変わったか

Appleは2021年6月7日のニュースリリースで、iOS 15・iPadOS 15・macOS Montereyの新機能として「メールプライバシー保護」を発表しました。リリースでは、この機能が「差出人が目に見えないピクセルを使ってユーザーに関する情報を収集するのを防ぎます」と説明され、「ユーザーがいつEメールを開いたかを差出人が知るのを防ぎ」、IPアドレスを隠すとしています。

仕組みについては、Appleの「メールプライバシー保護とプライバシー」のページが詳しく説明しています。このページによると、メールアプリまたはiCloud.comのメールで受信したメールについて、「あなたがメールをどのように操作したかにかかわらず、リモートコンテンツはデフォルトでバックグラウンドでダウンロードされます」。リモートコンテンツとは、開封の計測に使う画像のように、メールの外のサーバーから読み込む内容のことです。ダウンロードは複数の中継を経由して行われ、送信者には受信した人の本当のIPアドレスが伝わりません。

Macの「メール」の使い方のページでも、この機能をオンにするとIPアドレスが送信者から隠され、リモートコンテンツはメッセージを開いたときではなく、受信時にバックグラウンドで読み込まれると説明されています。

計測する側から見ると、次のことが起こります。メールが届いた時点で、人が開いたかどうかに関係なく計測用の画像が読み込まれ、「開封」が記録されます。しかも、その時刻は人が読んだ時刻ではなく、受信した時刻に近くなります。

この機能の対象になるのは、Appleのメールアプリ(iPhone・iPad・Mac)とiCloud.comのメールで受信したメールです。受信した人がGmailのアプリなど別のアプリで読んでいる場合は、この機能の対象外です。どのくらいの割合のお客さまが対象かは、お店ごとに違います。

メールプライバシー保護の設定場所

お客さまの環境を想像するために、設定の場所も知っておくと役に立ちます。Appleの説明によると、次の場所で切り替えます。

端末設定の場所
iPhone・iPad「設定」>「アプリ」>「メール」>「プライバシー保護」>「“メール”でのアクティビティを保護」
Mac「メール」アプリ>「メール」メニュー>「設定」>「プライバシー」>「“メール”でのアクティビティを保護」
iCloud.com「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「メールアクティビティを保護する」

Macのページによると、この項目をオフにした場合でも、IPアドレスの非公開やリモートコンテンツのブロックを個別に設定できます。リモートコンテンツをブロックしている人は、メールを開いても画像が読み込まれないので、逆に開封が記録されません。

ずれる方向は1つではない

開封の数は、増える方向にも減る方向にもずれます。両方を知っておくと、数字の動きを冷静に見られます。

原因ずれる方向何が起きるか
Appleのメールプライバシー保護多くなる開いていない人も、受信した時点で開封として数えられる
メールサービスによる画像の自動取得多くなる受信時に画像を自動で取りに行く仕組みがあると、その取得が開封に数えられる
画像を表示しない設定・アプリ少なくなる開いて読んでいても、画像が読み込まれないので開封にならない
テキスト形式で読む少なくなる画像を含まない形で表示されると、開封は記録されない

GmailのヘルプはWeb版のGmailについて、画像付きのメールを受信すると「デフォルトでは」画像が自動的に表示されると説明しています。設定を変えて画像を表示しないようにしている人は、開いても開封に数えられません。どの理由がどれだけ効いているかは受信した人の環境しだいで、外から確かめる方法はありません。

開封率では判断できなくなったこと

  1. 件名の比較:件名を変えて開封率を比べても、Appleのメールアプリを使う人の分は件名に関係なく開封になります。差が出にくくなり、出ても件名の効果とは言い切れません。
  2. 「開封しなかった人」への再送:開封していない人に件名を変えて送り直す方法は、メールプライバシー保護を使う人を「開封した人」として扱うため、その人たちには再送が届きません。逆に、画像を表示しない人は、読んでいても再送の対象になります。
  3. 開封の時刻:受信時に読み込まれるので、「何時に開かれたか」は、送った時刻とほぼ同じになりがちです。配信時刻の最適化に使うのは難しくなりました。
  4. 休眠の判定:「90日開封がない人を休眠とみなす」といった判定は、Appleのメールアプリを使う人をいつまでも休眠と判定しない方向にずれます。
  5. 過去との比較:メールプライバシー保護が始まった前後や、お客さまの端末の構成が変わった前後では、開封率の上がり下がりが、お客さまの関心の変化なのか、計測の変化なのか区別できません。

代わりに何を見るか

開封率をまったく使えないわけではありません。同じリストに、同じ間隔で送り続けているなら、大きな変化(急に半分になった、など)は届いていない可能性を知らせる合図になります。ただし、判断の中心は、お客さまが自分で操作したときにしか記録されない指標に移します。

指標何が分かるか信用できる度合い
開封数・開封率届いて、画像が読み込まれた目安。増える方向にも減る方向にもずれる
クリック数・クリック率メールの中身に興味を持ってリンクを押した開封より確か。どのリンクが押されたかで内容の評価もできる
サイトへの再訪メールのあと、お店のサイトに戻ってきたメールの目的に近い。クリックせず検索から戻る人も含められる
特定のページの閲覧商品ページやカートページまで進んだ購入に近い行動として使える
登録・購入完了ページの閲覧申し込みや購入まで進んだ最終的な成果。ただし件数が少ない
配信停止の数送りすぎ・内容のずれへの不満少ない数でも重く見る

目安として、「件名の良しあし」はクリック率で、「メールの内容とお店のサイトがうまくつながっているか」はサイトへの再訪と商品ページの閲覧で、「売上につながったか」は購入完了ページの閲覧で見ます。件数が少ないメルマガでは、クリックの数そのものが少なくなるので、1回の配信で決めずに、数回分を並べて比べます。

marketingLABOでの見方

marketingLABOのメール配信(メルマガ、ライト以上)とジャーニー(スタンダード)では、メールの開封とリンクのクリックを計測しています。開封は、ほかの多くのツールと同じく画像の読み込みで数えているため、上で説明した自動の読み込みも開封に含まれ、実際より多めに出ることがあります。開封は目安として見て、クリックとサイトへの戻りを重く見てください。

メルマガの一覧では、配信ごとに配信数・開封率・クリック率に加えて、サイトアクセス率(配信先のうち、配信日以降に1回以上サイトにアクセスした人の割合)と配信停止率が並びます。開封率の横にあるサイトアクセス率が、「メールのあとにお店へ戻ってきたか」を見るいちばん手軽な数字です。計測タグを貼ったサイトでは、そのあとの行動も訪問者ごとの行動履歴に残り、どの商品ページを見てカートまで進んだかを1人ずつ追えます。

ジャーニーでは、次の条件で流れを分けられます。開封だけに頼らない組み方ができます。

  1. 開封状況:直前のメールを開封した/していない。目安として使い、これだけで大事な分岐をしない。
  2. リンククリック:メールの中のリンクを押した/押していない。次に送る内容を決めるのに向いています。
  3. サイト再訪:指定した期間内に、サイトに戻ってきた/来ていない。
  4. ページビュー:指定したURL(商品ページ・カートページなど)を見た/見ていない。
  5. メールアドレス:メールアドレスが分かっている/分からない。

たとえば「開封しなかったら件名を変えてもう一度送る」流れを作るなら、「リンクをクリックせず、3日以内にサイトにも戻っていない人」に送り直す形にすると、メールプライバシー保護の影響を受けにくくなります。日ごとの送信・開封・クリックの数はジャーニーごとに見られ、配信停止した人には途中のメールも送りません。登録直後からの流れの例は会員登録後のステップメールの組み方で紹介しています。

再送の前に確かめたいこと

開封していない人への再送は、送る回数を増やすことでもあります。受信した人の側から見ると、同じお店から似たメールが短い間隔で2通届くことになり、配信停止の理由にもなります。再送するのは、セールの最終日の案内のように理由がはっきりした回だけにし、2通目では件名と最初の1行で「前回のお知らせの続き」だと分かるようにします。メルマガの同意の取り方や、配信停止の方法を表示する義務についてはメルマガ登録の同意の取り方にまとめています。

見直しのチェックリスト

  1. 開封率は「届いたかどうかの目安」とし、件名の評価はクリック率で行っている。
  2. 大事な分岐(再送・休眠の判定など)を、開封だけで決めていない。
  3. メールのリンクから、サイトのどこへ行ったかを確かめられるようにしている(計測タグを全ページに貼っている)。
  4. 1回の配信の数字で決めず、数回分を並べて比べている。
  5. 開封率が急に上がったとき、配信リストの構成やお客さまの端末の変化を先に疑っている。
  6. 再送は理由のある回だけにし、配信停止の数を見ている。

よくある質問

Q. ある時期から開封率が急に上がりました。メルマガが良くなったのでしょうか?
そうとは限りません。クリック率や、メールのあとのサイトへの再訪も同じように上がっているかを確かめてください。開封だけが上がり、クリックや再訪が変わらないなら、計測の変化による可能性が高いと考えます。

Q. Appleのメールアプリを使っている人だけを除いて開封率を計算できますか?
メールプライバシー保護では、送信者に本当のIPアドレスが伝わらないように中継されるため、送信者の側で正確に見分けるのは難しくなっています。除いて計算するより、開封以外の指標で判断するほうが確かです。

Q. クリックも水増しされることはありますか?
開封に比べると、人がリンクを押さなければふつうは記録されないので、ずれは小さいと考えられます。それでも1件ずつの数字に頼りすぎず、どのリンクが押されたか、そのあとサイトで何をしたかと合わせて見てください。

marketingLABOは無料で登録できます。メール配信はライトプランから、ジャーニーはスタンダードプランで使えます。プランの違いは料金をご覧ください。

参考にした資料

Apple「Legal - メールプライバシー保護とプライバシー」(2026年10月12日確認): https://www.apple.com/jp/legal/privacy/data/ja/mail-privacy-protection/

Apple サポート「Macの「メール」でメールのプライバシーを保護する」(2026年10月12日確認): https://support.apple.com/ja-jp/guide/mail/mlhlp1205/mac

Apple サポート「iCloud.comで「メールプライバシー保護」を使用する」(2026年10月12日確認): https://support.apple.com/ja-jp/guide/icloud/mm90f7d05c96/icloud

Apple Newsroom「Apple、iOS 15、iPadOS 15、macOS Monterey、watchOS 8でプライバシーに対する一層のリーダーシップを推進」(2021年6月7日、2026年10月12日確認): https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/06/apple-advances-its-privacy-leadership-with-ios-15-ipados-15-macos-monterey-and-watchos-8/

Gmail ヘルプ「Gmail で画像を表示または非表示にする」(2026年10月12日確認): https://support.google.com/mail/answer/145919?hl=ja

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