クーポンは景品表示法の「景品」になる?|値引きと景品の線引きとポップアップの書き方

「初回10%オフクーポン」「メール登録で500円引き」「抽選で100名に1,000円クーポン」。ポップアップでよく見るこうした特典は、景品表示法の「景品」にあたるのでしょうか。結論から言うと、自分のお店で使える割引クーポンを条件どおりに配るだけなら、原則として景品ではなく「値引き」として扱われ、景品の上限はかかりません。一方で、抽選で配る、ほかのお店で使える券を配る、割引とおまけを選ばせる、といった配り方をすると、景品として上限の対象になることがあります。この記事では、消費者庁の告示・運用基準・Q&Aをもとに線引きを整理し、ポップアップの文言で気をつける点をまとめます。

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この記事は、景品表示法の条文と消費者庁の告示・運用基準・Q&Aをもとにした一般的な説明で、法的な助言ではありません。個別の企画が規制の対象になるかどうかは、弁護士などの専門家や消費者庁の相談窓口にご相談ください。

景品表示法の「景品類」とは

景品表示法の第2条第3項は、「景品類」を、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品や役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するもの、と定めています。消費者庁の景品規制の概要では、これを次の3つに分けて説明しています。

  1. 顧客を誘引するための手段として
  2. 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
  3. 物品、金銭その他の経済上の利益

運用基準によれば、商品を通常の価格よりも安く買える利益も「経済上の利益」に含まれます。ですから、クーポンもこの3つにはあてはまりえます。ここで大切なのが、指定の告示の「ただし書」です。

値引きは、景品類に含まれない

景品類を指定する告示は、「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益」などは景品類に含まないとしています。そして「景品類等の指定の告示の運用基準」は、取引通念上妥当と認められる基準に従って、取引の相手方が支払うべき対価を減額することは、原則として値引きにあたるとしています(複数回の取引を条件とする場合を含みます)。例として「×個以上買う方には、○○円引き」「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」が挙がっています。

消費者庁の「景品に関するQ&A」も同じ考え方です。合計2,000円以上の購入者に次回以降使える30%割引券をもれなく配る例(Q37)や、次回以降の支払いに充てられるポイントを配る例(Q39)について、取引通念上妥当と認められる基準に従っていれば値引きにあたり、景品規制の対象にはならない、と答えています。値引きは購入時だけでなく次回以降の購入時のものも含み、同じ商品だけでなく別の種類の商品の値引きも含む、とも説明されています。

ネットショップに置きかえると、「自分のお店で使える○円引き・○%オフのクーポンを、決めた条件で配る」のは、原則として値引きです。初回購入クーポンも、メール登録の特典として渡す割引クーポンも、基本はこの形です。

クーポンの配り方と扱いの早見表

配り方扱いの目安根拠
自店で使える○円引き・○%オフのクーポンを条件どおりに配る値引き(景品規制の対象外)指定告示ただし書、運用基準6(3)ア、Q&A Q37
次回以降に使える割引券・ポイント値引き(景品規制の対象外)運用基準6(3)ア、Q&A Q37・Q39
抽選で当たった人に割引クーポン値引きと認められず、懸賞の景品運用基準6(4)ア、Q&A Q46
割引とおまけのどちらかを選ばせる値引きと認められない運用基準6(4)ア
別の会社のお店で使える割引券・ギフト券景品(総付景品の規制)Q&A Q41
購入者全員に別の商品(おまけ)をつける景品(総付景品の規制)景品規制の概要、Q&A Q110
特定の商品との引換券(「○○1個無料券」など)景品にあたる場合があるQ&A Q11、運用基準6(3)ウ

いずれも「取引通念上妥当と認められる基準に従っている」ことが前提です。表は一般的な目安で、具体的な企画の判断は専門家に確認してください。

値引きと認められない配り方

運用基準の6(4)は、対価の減額や割戻しであっても、値引きにあたらない場合を挙げています。ポップアップの企画で特に関係するのは次の3つです。

  1. 懸賞(抽選など)で配る。Q&AのQ46は、一定期間に500円以上買った人を対象に、次回使える値引券を抽選で配る例について、懸賞による場合は値引きとは認められず景品類に含まれ、一般懸賞の規制の対象になると答えています。この例では取引の価額が500円なので、値引券の最高額は20倍の10,000円、総額は売上予定総額の2%以内です。さらに、割引率で表示する値引券(〇%値引券)は、割引額の上限を設定しないと一般懸賞の規制の範囲を超える可能性がある、と注意しています。
  2. 割引と景品を同じ企画で選ばせる。運用基準は、金銭か招待旅行かを選ばせる場合などを例に、同一の企画で景品類の提供と併せて行う場合は値引きにあたらないとしています。「500円引き」か「ノベルティ」かを選べるポップアップは、この形になります。
  3. 他社のお店で使える券を配る。Q&AのQ41は、自社が運営する別のお店で使える値引券は値引きにあたるが、別法人が運営するお店の値引券であれば、景品類に含まれ総付景品の規制の対象になる、と説明しています。

景品になったときの上限

景品にあたる場合は、配り方によって上限が変わります。抽選などで当たる人を決めるのが「懸賞」、購入者全員や先着順に配るのが「総付景品」です。懸賞の告示は、懸賞を「くじその他偶然性を利用して定める方法」と「特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」と定めています。上限は消費者庁の景品規制の概要と各告示のとおりです。

種類取引の価額景品の最高額景品の総額
総付景品1,000円未満200円定めなし
総付景品1,000円以上取引の価額の10分の2定めなし
一般懸賞5,000円未満取引の価額の20倍懸賞に係る売上予定総額の2%
一般懸賞5,000円以上10万円懸賞に係る売上予定総額の2%

取引の価額は消費税込みの価格で見ます(Q&A Q60)。購入額の多少を問わずに配る場合の取引の価額は、原則として100円です(総付景品の運用基準1(2))。たとえば金額を問わず「ご購入の方全員に○○プレゼント」とすると、取引の価額は原則100円なので、景品の上限は200円です。対象となる商品で通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えるときは、その最低の価額を取引の価額とすることができ、それが1,000円以上なら、その10分の2が上限になります。

なお、総付景品の告示の第2項は、景品類にあたる場合でも、自己の供給する商品や役務の取引で用いられる割引券その他割引を約する証票であって、正常な商慣習に照らして適当と認められるものには、総付景品の上限を適用しないとしています。

「先着」と「抽選」は扱いが違う

懸賞の運用基準は、来店や申込みの先着順で決めることは「懸賞」にあたらないとしています。ただしQ&AのQ112は、ウェブサイトなどでの購入の申込み順に景品を配る場合に、申し込んだ時点で受け取れるかどうかを知ることができず、偶然性で決まるのと同じと認められるときは、懸賞とみなされることがある、と付け加えています。

ネットで「先着100名様」と書くなら、申し込んだ人がその場で対象になったかどうかを分かるようにしておくのが安全です。たとえば、残りがなくなった時点でクーポンの配布やバナーを止め、「配布は終了しました」と表示します。抽選にしたい場合は、上の一般懸賞の上限を必ず確かめてください。

景品でなくても、表示のルールはかかる

値引きクーポンが景品規制の対象外でも、クーポンの案内は「表示」です。景品表示法の第5条第2号は、価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)を禁じています。クーポンの文言では、次の点に気をつけます。

  1. 条件をクーポンのそばに書く。最低金額、対象外の商品、1人1回かどうか、有効期限を、「○%オフ」と同じバナーの中に読める大きさで書きます。条件を離れた場所に置く表示の考え方は、送料無料のお知らせはどこに出すかで、消費者庁の資料とともに説明しています。
  2. 期限は本当の期限にする。期限を過ぎても同じクーポンが使えるなら、期限の表示は実際と違うことになります。カウントダウンを付けるなら、カウントダウンタイマーと景品表示法の手順で、締め切りに合わせてください。
  3. クーポン後の価格と並べる「通常価格」に実績があること。消費者庁の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」は、販売実績のない「通常価格」とクーポン適用後の価格を並べた表示を、問題となる事例として挙げています。
  4. 「初回限定」は本当に初回だけに。2回目以降の人も同じ条件で使えるなら、「初回限定」はやめるか、カート側で初回だけに使えるようにします。

ポップアップの文言例

場面文言の例(架空の例)
初回購入初めてのお買い物で使える10%オフクーポン。5,000円(税込)以上のご注文、10月31日23:59まで、お一人様1回限り
メール登録メール登録で500円引きクーポンをお送りします。3,000円(税込)以上でご利用いただけます。新商品やセールのお知らせも届きます
先着先着100名様に500円引きクーポン。上限に達した時点で配布を終了し、このバナーでお知らせします
セール10月20日(月)23:59まで、全品20%オフ(一部セール対象外の商品があります。対象は商品ページに表示)

メール登録と引き換えにクーポンを渡すときは、メルマガが届くことと配信停止の方法も書きます。同意の取り方はメルマガ登録の同意の取り方、ポップアップ全体の作り方はメール登録ポップアップの作り方をご覧ください。

marketingLABOでできること・できないこと

marketingLABOでは、EC向けテンプレート55種類のうち「クーポン・割引」「会員登録・ポイント」「セール・期間限定」などの分類から選んで、クーポンのポップアップを作れます。初めて来た人だけに出す、カートのページを見たのに購入完了ページを見ていない人が再訪したときに出す、といった出し分けや、表示期間の設定、カウントダウンの表示もできます。

marketingLABOはカートシステムと連携していないため、クーポンコードの発行、1人ずつ違うコードの配布、コードが使われたかどうかの確認、初回購入かどうかの判定はできません。抽選で当選者を決める機能もありません。クーポンの金額・条件・期限・利用回数はカートシステムで設定し、ポップアップにはその内容を同じ言葉で書いてください。「初めて来た人に出す」は、同じ端末・ブラウザでの訪問回数による判定で、初回購入の確認ではありません。

公開できるポップアップバナーは、フリープランで1つ、ライトプラン(月4,800円・税込)で3つ、スタンダードプラン(月9,800円・税込)で無制限です(料金)。

公開前チェックリスト

  1. クーポンは自分のお店で使える割引で、抽選ではなく条件どおりに全員(または先着)に配る。
  2. 割引とおまけを選ばせる企画になっていない。
  3. 他社のお店で使える券やギフト券を配るなら、総付景品の上限を計算した。
  4. 抽選にするなら、一般懸賞の最高額と総額を計算し、%割引には上限額を付けた。
  5. 最低金額・対象外の商品・1人1回・有効期限を、クーポンと同じバナーに書いた。
  6. カートシステムのクーポン設定と、バナーの文言が一致している。
  7. 先着なら、上限に達したときに配布とバナーを止める段取りがある。

よくある質問

メール登録だけ(購入なし)で渡すクーポンも値引きですか?

自分のお店での購入時に代金から差し引く割引であれば、値引きの考え方があてはまります。運用基準とQ&Aは、次回以降の購入時の減額も値引きに含むとしています。一方、登録した人に割引ではない品物を渡す場合は、景品にあたるかを別に考える必要があります。Q&AのQ15は、無料の会員登録を条件に抽選で景品を渡す企画は、通常それだけでは取引に付随しないが、取引につながる可能性が高い事情があれば景品規制の対象になる、としています。

送料無料クーポンはどうなりますか?

今回確認した消費者庁の資料には、送料無料クーポンを直接取り上げた例は見当たりませんでした。表示の面では、条件をはっきり書くことが大切です。送料無料の表示については、送料無料のお知らせの記事で消費者庁の資料を紹介しています。

「○%オフ」と「○円引き」で扱いは変わりますか?

条件どおりに配る値引きであれば、どちらも値引きです。ただし抽選で配る場合は、Q46のとおり%表示の値引券は割引額の上限を設けないと懸賞の上限を超えるおそれがあります。

まずは無料で登録して、カート側で作ったクーポンを、条件と期限を添えたポップアップで案内してみてください。

参考にした資料

  1. e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」第2条第3項・第5条(2026年10月12日確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134
  2. 消費者庁「景品規制の概要」(2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/
  3. 消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_6.pdf
  4. 消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」(令和6年4月18日改正。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_240418_02.pdf
  5. 消費者庁「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第5号。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_7.pdf
  6. 消費者庁「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」(2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_22.pdf
  7. 消費者庁「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第3号。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_8.pdf
  8. 消費者庁「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準」(平成24年6月28日。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/120702premiums_1.pdf
  9. 消費者庁「景品に関するQ&A」(2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/premium/assets/representation_cms220_250620_01.pdf
  10. 消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(令和4年6月29日一部改定。2026年10月12日確認): https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_220629_07.pdf

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