ECサイトのマーケティングオートメーション(MA)とは|小さなショップで自動にできること・できないこと

「マーケティングオートメーション(MA)」と聞くと、営業チームのある大きな会社が使う仕組みを思い浮かべるかもしれません。けれども、考え方そのものはとても単純で、 「お客さまの行動を記録し、条件で分け、合ったものを自動で出す・送る」というだけです。この記事では、ネットショップを例にMAの3つの段階を説明し、 小さなショップが最初に自動化するとよい施策と、MAでは自動にできないことを整理します。

更新

マーケティングオートメーションとは

マーケティングオートメーションは、これまで人が手作業で判断していた「誰に・いつ・何を案内するか」を、あらかじめ決めた条件に沿って自動で行う仕組みです。ツールの名前ではなく、仕事の進め方の名前だと考えると分かりやすくなります。

ネットショップでたとえると、店長が毎朝アクセスの記録を見て「昨日カートまで来て買わなかった人が今日また来たら、クーポンを見せよう」と考え、手で設定する作業を、ルールとして一度だけ決めておき、あとは自動で回すイメージです。MAは次の3段でできています。

段階することネットショップの例
1. 記録する訪問者がどのページを、どこまで読み、何回目の訪問かを記録する商品ページを見た、カートのページを見た、会員登録フォームを送信した、メルマガを開いた
2. 条件で分ける記録をもとに、訪問者をいくつかの集まりに分ける初めて来た人、30日以上あいて戻ってきた人、広告から来た人、カートを見たのに購入完了ページを見ていない人
3. 自動で出す・送る分けた相手ごとに、決めておいたバナーやメールを自動で届ける初めての人に会員登録の特典、登録した人に3日後のメール、しばらく来ていない人に呼び戻しのメール
どれか1段だけでは自動化になりません。記録だけならアクセス解析、配信だけならメルマガです。3段がつながったときに、はじめて「その人に合ったものが勝手に届く」状態になります。

BtoBのMAとECサイトのMAの違い

MAという言葉は、もともと企業向け(BtoB)の営業で広まりました。BtoBのMAは、資料請求した会社の担当者を点数づけ(スコアリング)し、点数が高くなったら営業担当に渡すのが中心です。ECサイトでは相手もゴールも違うため、同じ発想のまま導入すると使わない機能ばかりになります。

BtoBのMAECサイトのMA
相手会社の担当者個人のお客さま
ゴール商談・契約その場での購入、会員登録、次回の再訪
検討期間数週間〜数か月数分〜数日のことが多い
主な手段メール、営業への通知、スコアリングサイト内のポップアップ、メルマガ、ステップメール
大事なこと見込みの高い会社を見つける帰りそうな人をその場で引き留める、買った人をまた来させる

ECサイトでは、検討の多くがサイトにいる数分のあいだに終わります。そのため、メールだけでなく「サイトにいるあいだに何を見せるか」が、MAの半分を占めます。メールアドレスが分からない初めての訪問者にも届くのは、サイト内のポップアップだけだからです。

1段目: 何を記録するか

MAの出発点は記録です。サイトの全ページに計測タグを1行貼ると、訪問者ごとに次のような行動がたまっていきます。

  1. 見たページと順番。トップから商品一覧、商品ページ、カートへと、どの順で進んだか。訪問者ごとの行動履歴として時系列で残ります。
  2. ページの中での動き。どこまでスクロールしたか、どこをクリックしたか。ページ単位で集めるとヒートマップになります。読み方は商品ページのヒートマップの読み方で詳しく説明しています。
  3. 訪問の回数と間隔。初めてか、何回目か、前回の訪問から何日たったか。
  4. どこから来たか。自然検索、ほかのサイトのリンク、直接の入力、広告などのURLパラメータ。
  5. フォームの送信とメールへの反応。会員登録フォームを送った、メルマガを開いた、リンクをクリックした。

記録はブラウザのCookieで同じ人かどうかを見分けます。スマホで見てパソコンで買う人や、Cookieを消した人は、別の訪問者として数えられます。数字は「だいたいの傾向」として扱い、1人ひとりの記録を細かく追いすぎないのがコツです。

2段目: どんな条件で分けるか

分け方は、凝るほど対象の人数が減り、効果が測りにくくなります。最初は次のような、ショップの売り場で店員が自然にしている声かけに近い分け方から始めるのがおすすめです。

分けたい相手使う条件出すもの・送るもの
初めて来た人訪問回数=初回会員登録の特典バナー
カートを見たのに購入完了ページを見ていない人が再訪したとき見たページ・見ていないページ・訪問回数クーポンのバナー
30日以上あいて戻ってきた人前回の訪問からの日数新商品のお知らせ
広告から来た人アクセス元=URLパラメータ広告と同じキャンペーンのバナー
商品ページを半分まで読んだ人スクロール50%送料無料のお知らせ
ページを閉じようとした人離脱しそうなときクーポンやメール登録の案内
会員登録フォームを送った人フォームの送信お礼と使い方のメールから始まるステップメール

「ページを閉じようとした人」は、パソコンではマウスが画面の上端から外に出たとき、スマホではある程度読んだあとに素早く上へスクロールしたときに判定します。ブラウザの「戻る」ボタンの動きを書き換えるような方法は使いません。

3段目: 自動で出す・送る

分けた相手に届ける手段は、大きく「サイトの中」と「メール」の2つです。役割が違うので、両方をつなげて考えます。

手段届く相手向いていること
ポップアップバナー(モーダル・フローティング・帯)いまサイトを見ているすべての人(メールアドレスが分からない人も)その場の後押し。特典、送料無料、締め切りのお知らせ、メール登録
メルマガメールアドレスが分かり、配信に同意した人新商品やセールを、登録者全員に一斉に知らせる
ジャーニー(ステップメール)条件に当てはまった人登録後のお礼、数日後の案内、しばらく来ていない人の呼び戻しを、順番に自動で送る

たとえば「会員登録フォームを送信 → すぐにお礼と使い方のメール → 3日待つ → 開封した人には人気商品の紹介、開封しなかった人には件名を変えてもう一度 → 7日待つ → サイトに再訪した人はゴール、来なかった人にはクーポンのメール」という流れを一度組めば、あとは登録した人ごとに自動で進みます。

小さなショップが最初に自動化する3つ

全部を一度に始める必要はありません。次の3つは、少ない設定で回り始め、効果も確かめやすいものです。

  1. 初めての人に、会員登録やメール登録の特典を出す。条件は「訪問回数=初回」だけ。リピーターには出さないので、何度も同じポップアップが出てうるさく感じさせることを避けられます。
  2. 登録した人に、3〜4通のステップメールを送る。登録直後のお礼、数日後のおすすめ商品、さらに数日後の特典という短い流れで十分です。
  3. しばらく来ていない人を呼び戻す。一定の期間サイトに来ていない人をきっかけにメールを送り、戻ってきたら終える。ジャーニーにはこの流れのひな形があります。

3つとも、設定して終わりではありません。月に一度はバナーの表示回数とクリック数、メールの開封とクリックを見て、言葉や特典を入れ替えます。

MAでは自動にできないこと

MAが扱えるのは、計測タグで記録できる「行動」です。ショップのカートや在庫のデータそのものではありません。marketingLABOで言うと、次のことはできません。導入前に知っておくと、カートシステム側の機能とどう分担するか決めやすくなります。

できないこと理由・代わりの考え方
カートに入っている商品や金額を読むカートシステムとは連携していません。「カートのページを見たか」は分かりますが、中身は分かりません。
カートの中身を載せたカゴ落ちメールを送るカートのデータを使うメールは、カートシステム側の機能の役目です。サイト内では「カートを見て購入完了ページを見ていない人」が再訪したときにバナーを出せます。
「あと○円で送料無料」を自動で計算して出す金額が読めないため出せません。送料無料になる金額を固定の文で知らせます。
在庫と連動した再入荷のお知らせ在庫とは連携しません。再入荷のバナーは手で入れ替えます。
商品のおすすめ(レコメンド)、SMS、Webプッシュ機能としてありません。
ポップアップのA/Bテスト、表示回数の上限A/Bテストはフォームだけです。ポップアップは出す相手(初回の人だけ、など)で出しすぎを防ぎます。
Cookieの同意を管理する(同意管理ツール)機能としてありません。必要な場合は別のツールを使います。

MAを始めたショップがつまずきやすい点

  1. 誰にでも同じポップアップを出す。リピーターや買ったばかりの人にも初回特典を出すと、うるさく感じられるうえ、特典の価値も下がります。出す相手を必ず条件で絞ります。
  2. 条件を細かく分けすぎる。「広告から来た、3回目の訪問で、商品ページを半分読んだ人」まで絞ると、対象が数人になり、効いたかどうか判断できません。最初は条件1〜2つで十分です。
  3. 値引きばかりで引き留める。毎回クーポンを出すと、クーポンが出るまで買わないお客さまが増えます。送料無料のお知らせ、レビューへの案内、メール登録の特典など、値引き以外の手も混ぜます。
  4. 記録がたまる前に判断する。数日分の数字は、たまたまの多い少ないに左右されます。同じ長さの期間どうしで比べます。
  5. メールの流れを長くしすぎる。10通を超える流れは、途中で直すのが大変です。3〜4通で始め、反応を見て足します。

始める前に押さえておきたいメールのルール

広告や宣伝のメールを送るときは、日本では「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)に沿う必要があります。条文の要点は次のとおりです。

  1. あらかじめ同意を得た人などにだけ送る(第3条第1項)。会員登録やポップアップでメールアドレスを集めるときは、宣伝のメールを送ることへの同意を取ります。
  2. 同意の記録を残す(第3条第2項)。いつ、どの画面で同意を得たかが分かるようにしておきます。
  3. 配信停止を求められたら送らない(第3条第3項)。
  4. 送信者の氏名または名称と、配信停止の連絡先をメールに表示する(第4条)。

また、Gmailの「メール送信者のガイドライン」では、1日に5,000件以上送る送信者に、ワンクリックで配信停止できるヘッダーを付けること、迷惑メール率を0.3%未満に保つことなどを求めています。marketingLABOのメルマガとジャーニーのメールには、ワンクリック配信停止のヘッダーが付きます。送信ドメインの認証(SPF・DKIM・DMARC)は、お使いのドメインのDNS側で設定します。

この節は一般的な説明で、法的な助言ではありません。具体的な判断は、総務省・消費者庁のガイドラインを確認するか、専門家にご相談ください。

導入の手順

  1. 計測タグを全ページの<head>に貼る。サイトのデザインやHTMLを作り直す必要はありません。
  2. 2〜4週間、記録をためる。この間にヒートマップと行動履歴を見て、どのページで帰っているかを確かめます。
  3. 1つ目の条件とバナーを決める。まずは「初めての人に会員登録の特典」など1つだけ。
  4. メールの同意の取り方を決める。登録フォームやメール登録付きのポップアップに、同意の文を置きます。
  5. ステップメールや呼び戻しのメールを組む。ジャーニーのひな形から始めると早く組めます。
  6. 月に一度、数字を見て1か所だけ直す。一度に何か所も変えると、どれが効いたか分からなくなります。

marketingLABOのプランとMAの機能

フリーライトスタンダード
料金(税込)0円月4,800円(年48,000円)月9,800円(年98,000円)
記録(アクセス解析・ヒートマップ・行動履歴)○○○
ポップアップバナー1つ3つ無制限
フォーム1つ3つ無制限
メルマガ−○○
ジャーニー(ステップメール)−−○

フリープランでも1段目の記録と、2段目・3段目をサイトの中で試すこと(バナー1つ)ができます。メールまで自動にするならスタンダードプランです。詳しくは料金プランをご覧ください。

よくある質問

小さなショップでもMAは必要ですか?

必要かどうかは、手作業で回せているかで決まります。毎週同じ判断を手でくり返しているなら、その部分だけを自動にする価値があります。最初から全部を自動にする必要はありません。

メールアドレスが分からない訪問者には何ができますか?

サイトの中のポップアップで案内できます。メールアドレスが分かる人と分からない人をジャーニーの分岐で分け、分からない人にはサイト内で会員登録やメール登録をすすめる、という組み合わせがよく使われます。

アクセス解析ツールとの違いは何ですか?

アクセス解析は1段目の「記録する」までです。MAは記録をもとに分け、バナーやメールを自動で届けるところまでを含みます。

フリープランでは何から試せばよいですか?

まずタグを貼って記録をため、ヒートマップで商品ページのどこまで読まれているかを確かめます。そのうえで、バナーを1つだけ「初めての人に会員登録の特典」や「商品ページを半分読んだ人に送料無料のお知らせ」のように作り、表示回数とクリック数を見ます。フリープランは期限なしで使え、クレジットカードの登録も要りません。

どのくらいで効果が分かりますか?

アクセス数によって大きく変わるため、決まった目安はありません。バナーなら表示回数がある程度たまるまで、メールなら1つの流れを最後まで通った人が出てくるまで待ってから判断します。

参考にした資料

  1. e-Gov法令検索: 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(第3条・第4条)
  2. 総務省: 迷惑メール対策(法律・ガイドラインの一覧)
  3. Gmailヘルプ: メール送信者のガイドライン

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